
■ 神戸市・MUIC Kansaiとの連携による地域防災DX実証実験
当社は、神戸市およびMUIC Kansaiと連携し、 2026年1月17日に、神戸市中央区を中心としたエリアの事前登録者を対象に、LINEを活用した広域安否確認の発信を実施しました。
実施内容(運用検証)
発災を想定した運用検証
本取り組みは、発災を想定した安否確認の運用検証として行ったもので、中央区内にとどまらず、区域外を含む広域での回答状況の把握を前提としています。
訓練会場での公開・受付DX検証
翌1月18日に開催された神戸市中央区総合防災訓練においては、 前日に発信した安否確認の実データを会場で公開するとともに、避難所受付におけるデジタル受付運用(受付名簿形成)の検証を実施しました。
関連資料
実証実験の実施日程(段階的な実施)
1月17日 (土)
事前登録者への安否確認配信およびデータ取得
1月18日 (日)
安否確認結果の公開および避難所受付DXの運用検証
という形で、日程を分けて段階的に実施しています。
当社が取り組む「地域防災DX」の考え方
― フェーズフリーの思想に基づく設計 ―
当社は、平時の地域コミュニティ運営と、有事の災害対応を一体で支える「地域防災DX」に取り組んでいます。
当社が重視しているのは、平時と有事を切り分けるのではなく、日常の仕組みを非常時にも活用するという「フェーズフリー」の考え方です。
災害発生時に突然デジタル化を導入することは現実的ではありません。
そのため当社は、平時から利用される「デジ町町内会LINE」によって、住民・世帯情報を適切に蓄積・管理し、その情報基盤を有事に活用する設計を行っています。
平時の情報基盤をもとに、有事には事前登録者に対して安否確認を実施し、回答結果を可視化します。
さらに、避難所ではデジタル受付を通じて受付名簿を自動生成し、災害対策本部が避難状況を把握できる仕組みを構築しています。
特に、避難所受付名簿の自動生成は、平時の世帯情報と連携することで、より正確な情報把握を可能にします。
このように、フェーズフリーの思想に基づき、平時と有事を一体で設計する地域防災DXの実装可能性について、今回の神戸での実証実験を通じて具体的な検証を行いました。
当社では、自治体様との連携による実証実験の取り組みを全国で進めております。
ご関心をお持ちいただけましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
広域安否確認の実運用検証
本実証では、平時に活用される地域住民データベースを有事にも活用するというフェーズフリーの仕組みに基づき、事前登録者を対象とした広域安否確認の運用検証を実施しました。
災害発生時のみ特別なシステムを導入するのではなく、平時から利用されているコミュニケーション基盤をそのまま活用することで、初動対応の迅速化を図ることが目的です。
住民はLINE上で「行く」「行かない」「行けない」の三択から状況を選択する方式を採用し、直感的な操作で回答できる構造としています。
■ 迅速な安否把握の可能性
取得情報は自動的に地図上へ可視化され、地域全体の状況を俯瞰的に把握できる構造となっています。
安否確認は事前登録者290名に対して実施し、201名(回答率69.3%)から回答を取得しました。
これは、災害時に住民が広域に分散する実態を示しており、避難所入所者だけでなく在宅避難者や広域所在者を含めた状況把握の重要性を示しています。
電話や個別訪問に依存せず、地域全体の状況を短時間で把握できる可能性が示されました。
■ 広域分散住民の状況把握
回答者の所在情報を分析した結果、約8割(81.1%)が自宅以外の場所から回答しており、住民の所在が広域に分散している実態が明らかになりました。
取得データは自動的に集約され、地理情報として可視化されます。
これにより、在宅避難者や広域に所在する住民を含め、地域全体の状況を把握できる構造であることを確認しました。
■ 住民操作性の検証
安否回答はLINE上の選択式操作で完結する設計とし、アンケート結果では「分かりやすい」との評価が多数を占めました。
重大な操作不能事例やシステムトラブルは確認されておらず、LINEという使い慣れたツールを、平時利用と同じ操作感で有事対応を実施できる点は、フェーズフリー設計における重要な検証結果といえます。
■ 自治体による状況把握と意思決定支援
回答情報は自動的にダッシュボードへ集約され、
回答件数
避難行動区分
年代・性別構成
時間推移
などを即時に確認できる状態となりました。
さらに、Googleマップ上では回答者の所在情報と避難行動区分を同時に可視化し、自治体職員が地域全体の状況を、地理情報と行動情報の両面から把握できる構造を確認しました。
避難所受付DXの実装検証(フェーズフリーの視点)
災害時の避難所運営では、受付対応や名簿作成が初動段階の大きな負担となることが多く、限られた人員の中で迅速な対応が求められます。
今回の実証実験では、LINEを活用した地域コミュニティの仕組みをベースに、QRコードを起点としたデジタル受付を実施し、平時の情報が有事の受付業務につながる「フェーズフリー」の運用を検証しました。
平時の登録が、有事の受付を支える構造
避難所受付では、QRコードを起点として受付を開始し、状況に応じて必要な確認・登録を行う運用を採用しました。
本実証では、平時登録の有無が受付工程にどのような影響を与えるかを検証するため、事前登録のある参加者と、登録がない参加者で明確に工程を分けて受付を実施しています。
■ 平時登録なし(新規ユーザー)
受付時に必要情報を入力
4工程を経て受付完了
■ 平時登録あり(既存ユーザー)
事前登録情報を確認する中心の運用
2工程で受付完了
検証の結果、受付に必要な工程数および処理時間には明確な差が確認されました。
つまり、
・平時の登録データが、有事における受付業務の効率化に直接影響する構造
であることが実証されたと言えます。
一方で、運用面においては、登録状況が異なる参加者が混在する環境でも、同一の受付導線上で処理を進められることが確認されました。
この構造により、
・平時から利用している住民はスムーズに受付
・未登録の住民も同じ流れで受付可能
という形で、現実的な避難所運営への適用可能性が示されています。
これは、日常的な情報活用が災害時の業務負担を軽減するという、フェーズフリーの考え方を具体的な運用として実装した一例といえます。
本実証により、平時の住民情報管理と災害時の避難所運営が、同一の仕組みの延長線上で成立することが確認されました。
これは、自治体において新たな専用システムを個別に構築するのではなく、既存の地域コミュニティ運営を活用しながら段階的に地域防災DXを進められる可能性を示しています。
実際の現場運用を想定した実証結果として、今後は地域特性に応じた実装・検証を各自治体と共に進めていくことを視野に入れています。
デジタル受付がもたらす運営面の変化
受付時に確認・入力された情報は、その場でデータとして集約され、名簿として一覧化されます。
これにより、
紙への記入や後日の転記作業を減らす
情報の見落としや記載ミスのリスクを軽減する
受付完了と同時に名簿が形成される
といった運営上のメリットが確認されました。
さらに、受付状況がリアルタイムに反映されるため、避難所現場だけでなく、運営側全体が状況を把握しながら対応できる可能性も見えてきました。
平時の延長で機能する受付導線
今回の検証で重視したのは、災害時でも迷わず利用できることです。
受付はQRコードを起点に開始し、参加者側の操作をできるだけシンプルに設計しました。
現場スタッフも一定の導線に沿って案内できる構成とすることで、受付全体がスムーズに進行する仕組みとなっています。
また、受付操作には、日常的に多くの住民が利用しているLINEを活用しています。
新たな専用アプリの習得を必要とせず、普段から使い慣れた操作で進められるため、災害時でも戸惑いが生じにくい点が特徴です。
さらに、スマートフォンは日常生活の中で常に携行されるデバイスであり、避難時にも持ち出される可能性が高いことから、現実的な災害対応ツールとして機能します。
特別な機器や専用端末を必要としない点も、現場運用上の大きな特長です。
その結果、デジタルに不慣れな方が含まれる環境においても、現場運用が成立することを確認しました。
自治体・地域での活用イメージ
この避難所受付DXは、単なるデジタル受付ではなく、
平時の地域コミュニティ運用
↓
有事の避難所受付・名簿管理
を自然につなぐ仕組みです。
体育館内で説明している様子
日常的に活用されるLINE基盤を使うことで、災害時だけ新しい仕組みを導入するのではなく、普段から使っている延長線上で避難所運営を行える点が特徴です。
まとめ
今回の神戸市での実証実験では、
平時に活用される地域コミュニティ基盤が、有事の安否確認や避難所運営へつながる仕組みを検証しました。
災害時だけの特別な仕組みではなく、
日常の地域運営の延長線上に防災を設計する――フェーズフリーに基づいた取り組みです。
地域防災DXは、大規模な導入ではなく、地域の状況に合わせた小さな実証から始めることが可能です。
当社は、自治体の皆さまと連携しながら、それぞれの地域に適した地域防災DXの実装を進めてまいります。